新型コロナウイルスに感染したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗船者受け入れを県が発表してから、三日で二週間がたった。この間、県内では二人の感染者が判明。千葉県の患者が県内を訪れていたことも相次いで分かり、状況は緊迫した。その後新たに発症した人はいないものの、感染者二人の感染経路は解明できておらず、県は感染の拡大に警戒を強めている。
■2人が感染
県内初の感染者となった大垣市の五十代男性は、重症の状態が続く。二月十四日に発熱と倦怠(けんたい)感があり、十七~十九日はJR東海道線(大垣-岐阜)を電車通勤して岐阜市内の勤務先に出勤していた。男性には基礎疾患があり、入院する大垣市の感染症指定医療機関で人工呼吸器による治療を受けている。
二十七日には妻の五十代女性も感染が確認された。症状は軽い。発症した男性と一緒に過ごし、公共交通機関で大垣市と大阪府を行き来していた。男性が治療中のため、発症前の立ち寄り先や他の感染者との接触の有無については聞き取りができず解明できていない。県は男性の回復を待って話を聞く方針だ。
■接触者多数
感染した夫婦は大垣市の二カ所の医療機関や岐阜市の歯科や薬局などを訪れていた。接触した医療従事者の中には発熱を訴えた人もいたが、ウイルス検査で全員が陰性となった。ただ、検査で一度陰性となっても後に陽性と出る事例が国内で確認されており、県は十四日間の観察中に症状が出れば再度検査する。
また、千葉県の七十代女性が十七、十八日に高山市の宿泊施設や白川郷(白川村)などを訪れていた。さらに同県の四十代男性会社員が十三、十四日に出張で大垣市を訪れ、市内の仕事先で濃厚接触した人がいたことも判明した。
岐阜、千葉両県の感染者四人の関連で、県が経過観察の対象とした人は計百十六人に上った。ただ、三月三日時点で新たな感染や疑いのある人は確認されず、千葉県の二人と接触した高山、大垣両市の対象八十人全員が十四日間の観察を終えた。大垣市の男性患者と接触があった同市の医療機関の一人も観察が終わった。
■クルーズ船
県内の医療機関に受け入れたクルーズ船の陽性患者八人は三日現在、発症していた五人を含む全員に症状がなくなり、二人が退院した。残りの六人も、発症した人は症状が消えてから二度のウイルス検査で陰性となれば、無症状の人は四十八時間症状がないと確認してから二度の検査で陰性が確認されれば退院となる。
検査で陰性となり、二月十九~二十一日に下船した県内在住者十六人は、発熱などがあった人を含む三人がいずれも検査で陰性。残る十三人に症状はないが、うち九人が検査を希望しており、県が今週中にも実施する予定だ。県は三日、新たに、検査で陰性だった県在住の乗務員一人の経過観察を始めたと発表した。
■感染予防策
県内二カ所のウイルス検査施設では二日までに、医療機関から依頼があった延べ百二十三人分を検査。現時点で患者との接触者も含めて、新たに感染した人は確認されていない。
県健康福祉部の堀裕行次長は「県内の限られた(接触者などの)数では(感染力の)判断が難しいが、観察してきた中ではすれ違ったとか一瞬接触があった程度では感染がないのは確か。引き続き観察を続けていきたい」と説明。予防策として、インフルエンザ流行期と同様に手洗いを徹底し、せきや熱のある人は人混みへの外出を避けるよう呼び掛けている。